半自動卦立器


 易は陰陽二値による両儀から始まり、四象、八卦、六十四卦と進んでゆく二進法的な世界を構成している。
 ライプニッツがブーヴエから送られた易図「伏羲六十四卦方位図」に二進法を見出したような明解な理解は、むろん雄文にはない。素朴に占いの手順を別のかたちで作り出した結果のようだ。
雄文が形にしたのは卦立てのうちの本筮と呼ばれるやり方だと思われる。

 易卦は陽を示す1本の線と、陰を示す短い2本の線で表される。それを3本並べたものは2の3乗で8通りあり、八卦 (はっけ、はっか)と呼ばれ、これを小成卦(しょうせいか)とも呼ぶ。また6本並べたものは2の6乗で64通りあり、これを大成卦(だいせいか)と呼ぶ。この 各々の線は爻(こう)と呼ばれる。爻は下から初爻、二爻、三爻、四爻、五爻、上爻となっている。
 陽には小陽と老陽の2種類あり、陰にも小陰と老陰がある。老陽は陰に、老陰は陽に変じやすいものと考え、立てた卦のなかにこれらがあった場合、変じて出来た卦のことを之卦(ゆくか、しか)といい、変化する爻のことを変爻という。

本筮を立てるには、大成卦を3つ(八卦6つ分)出さなくてはならない。
出た卦を下から順に積み重ね、(表1)の規則で爻を決める。こうして立てた本卦に対し、必要ならば之卦を作る。
大成卦を立てるにはさまざまな方法がある。筮竹を左右に分け、奇数/偶数というのを3回×6回=18回繰り返したり、硬貨を投げた表/裏の3回×6回=18回の操作でも立てることができ、8面体サイコロを6回投げたりしてもよい。

 雄文の考えた卦立ても発想としてはそれらと同じであった。ただ、その行程をすべて人の手で行わずに、半自動化している点で他の方法と異なっていた。
 この卦立てでは、蔓状の植物が支柱を伝わって成長してゆく過程が、筮竹や硬貨で行ったのと同じ意味あいの操作になるよう工夫し、1本の植物から1つの八卦を取り出している。
 鉢から芽吹いた植物は、まず最初の1本目の支柱に絡み付く。その支柱はその先で二又に分かれ、その先でも二又に分かれ、さらにその先でもう1回二又に分か れる。こうして都合3回二又に分かれることで、23=8本に枝分かれする。この8本にそれぞれ八卦の一つ一つが割り振られ、成長した植物がこの支柱のどの 枝に至るかによって求める卦が得られる。
 筮竹での奇数/偶数や硬貨での表/裏が、支柱の二又の左/右に相当し、八卦1つ分を得るのに必要な繰り返しも3回で同じになる。



 この卦立器一組で八卦を一組立てることができる。
枝分かれしてゆく度に陰陽に分かれてゆくと見なし(図1)、通ってきた道筋がそのまま(表1)に対応している。この八卦が右図にあるように、さらに大成卦の一つの爻に対応し、六組で一つの卦を立てることになる(図2)。立てた卦は(表2)のような名前になる。
この例では上三本が「山」で下三本が「雷」という卦になる。そこでこれを「山雷眼」と呼ぶ。


Semi-automatic Divination


  I-Ching is based on a binary world with the two values, Yin and Yang.
With this device, eight divination signs are read through a process of a creeper growing up a stake.
After sprouting, the plant in the pot first wraps itself around the bottom of the stake. As it rises, the stake branches off
into two, then branches off into two again, and further up branches off: by into two once again. Thus, the stake branches off into eight pieces.
  The eight divination signs are allotted to each of the eight branches. The divination results can be obtained depending on which branch of the stake the grown plant reaches.