個展 「計算する民具」 (トキ・アートスペース 2005)
「安堀雄文記念館」の予告として開催されました。
日本で独自に発達した数学「和算」は、江戸中期から後期にかけて隆盛を極めていった。世界史的に見て珍しいことに、そうした知識は中央の一部エリート層だけのものではなく、そろばんや九九などと共に、庶民にも一般教養としてひろまっていた。
全国的な一種の流行ともいうべき風潮を受けてか、地方のアマチュア算術家や算術愛好家の中には、計算具とも生活民具ともつかない一風変わった道具を、各々に工夫を加え考案する者も現れた。とりわけ、関流算術の盛んな上州から三国街道沿いの越後に至る地域にかつて伝えられていたとされる、「門扉カラクリ」の技術を応用した計算具には、現在の論理回路の考え方にも通ずるユニークな機構を見出すことができる。
この展示では「上州道具圖彙類」「越後算法雑纂」に残された断片的な資料をもとに、これらの計算具を図面と再現立体で示してみたい。