盛塩の大気中水分吸収・放散作用によるクロックパルス発信器 (1999)
コンピュータでは、各部品の動作のタイミングを取るために、クロック・パルスと呼ばれる信号をクロック発生器から供給している。加算器やフリップ・フロップなどの論理回路の動作はこのクロック・パルスに同期しているため、その動作速度はクロック・パルスの周波数によって決定される。
このクロック発生器は、塩が大気中の水分を吸収し、やがて発散してゆく周期を1クロックとして発振する装置である。
シーソー状の装置の片方が盛塩を置く盛塩部、もう一方が釣り合いおもりを置く部分となっている。
あらかじめよく炒り、水分を飛ばした粗塩を盛塩部に適量置き、それに釣り合うようにおもりを移動させる。おもりが釣り合った状態から少しおもり側に傾けた状態が「状態0」。粗塩が水分を吸収し十分に盛塩側に傾いた状態が「状態1」。
その後は周囲の大気中の水分量に応じ、 「状態0」と「状態1」を緩やかに行き来する。
(1) 初期状態
a 盛塩部に塩を盛り付ける
あらかじめフライパンなどでよく煎り水分をとばした塩を、盛塩部に盛り付ける。
使用する塩は、湿気を吸収し易いにがり分を含む天然塩が適している。
b つり合い重りを設置・移動
盛塩部の塩とつり合いを取るため、つり合い重りを作動腕上に設置する。
作動腕を一度水平に調整した後、盛塩部側が少し上がりぎみになるように、つり合い重りを移動する。
(2-1) 状態1
初期状態に調整した後、大気中の水分量が十分少ない場合は初期状態を維持する。
大気中の水分量が十分に多い場合や増加傾向にある場合は、盛塩部の塩が水分を吸収し、次第に盛塩部側に作動湾が傾斜してゆく。
盛塩の吸湿は、盛塩の水分含有量が飽和状態となり、これ以上吸湿できなくなる時点まで継続し、次に大気中の水分量が減少傾向に転換するまでこの傾向が維持される。
(2-2) 状態2
状態1時の周囲の大気の水分量が減少傾向に転換すると、十分に吸湿し飽和状態となった盛塩(このときはすでに液体状になっている)が水分の放散を始める。
作動腕は徐々につり合い重り側へ傾斜し、盛塩が十分に水分を放散するまでこの動きは継続する。状態2は周囲の水分量が再び増加傾向に転換するまでこの状態を維持する。
状態1から状態2へ移行する途中に周囲の大気の水分量が増加傾向に移行した場合は、状態2への移行が完了しないまま、再び状態1へと移行してゆく。
この装置では、周囲の水分量が増加し減少する周期を1クロックとする。
ただしその時点での季節や天候に依存するため、不定周期となる。